ピルと聞くと、多くの人が「避妊薬」というイメージを持つかもしれません。しかし、実はピルは避妊目的だけではなく、月経周期の安定やホルモンバランスの調整など、さまざまな医療的用途でも使用されており、妊活に向けた身体づくりの一環として使われることもあります。
「ピルを飲んでいたら妊娠しづらくなるのでは?」という不安を抱える人もいますが、それは正確な理解とは言えません。今回は小田原マタニティクリニックより、「ピルと妊活」をテーマに、ピルと妊活の関係性や注意点、妊娠を希望する際の正しい知識について解説します。
ピルの基本的な働き
まずは、ピルの基本的な働きについて見ていきましょう。
排卵を抑えるホルモン薬
ピルには、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲスチンが配合されており、これらが体内に存在することで妊娠していると脳が勘違いし、排卵を防ぎます。これにより、避妊効果が得られます。
また、子宮内膜が厚くなりにくくなること、子宮頸管の粘液が変化して精子が子宮内に入りにくくなることも、避妊効果を高める要因です。
月経不順やPMSの改善にも使われる
ピルは避妊以外にも、月経周期のコントロール、PMS(月経前症候群)の緩和、過多月経や子宮内膜症の治療補助など、さまざまな婦人科疾患の管理にも用いられています。これらの効果が妊活準備に役立つ場合もあります。
ピルは妊活に悪影響を及ぼす?
続いて、ピルは妊活に悪影響を及ぼすのかについて見ていきましょう。
ピル服用中は妊娠しないが、服用をやめれば妊娠可能
ピルを服用している間は、排卵が抑制されているため妊娠はできませんが、服用をやめればホルモンの自然な働きが再開し、排卵も戻ってきます。
一部の人は、ピルをやめた後すぐに排卵が再開する一方、数カ月かかる場合もあります。これは個人差によるもので、一般的にはピルをやめてから3カ月以内に自然排卵が戻るとされています。
長期間の服用が妊娠率を下げるという根拠はない
「長くピルを使っていると妊娠しづらくなる」という心配をする人もいますが、ピルの長期使用が将来の妊娠率に悪影響を与えるという明確な証拠はありません。
ピルを妊活準備として活用するケース
続いて、ピルを妊活準備として活用するケースを見ていきましょう。
排卵障害や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)への治療的使用
排卵障害がある場合や、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された女性には、一時的にピルを用いてホルモンバランスを整えることで、将来的な自然排卵や体外受精に向けた身体の準備を行うことがあります。
このように、ピルは「妊娠を遠ざける薬」ではなく、「妊娠の準備に役立つ薬」として使われるケースもあるのです。
月経周期の調整
ピルによって月経周期を整えることができれば、排卵のタイミングを把握しやすくなります。また、ホルモンバランスを整え、卵巣への刺激を減らすこともできます。
妊娠を希望する際のピルのやめ方と注意点
続いて、妊娠を希望する際のピルのやめ方について見ていきましょう。
自己判断での中止は避ける
妊活を始めたいと思ったときには、ピルを自己判断で中止するのではなく、医師に相談したうえでスケジュールを立てることが大切です。
ピル中止後は基礎体温や排卵検査薬を活用
ピルをやめた後は、自身の排卵の状態を把握するために基礎体温を測ったり、排卵検査薬を使うことで、排卵の有無や時期を確認することができます。これにより、タイミングを合わせた妊活がしやすくなります。
まとめ:ピルと妊活の関係とは?避妊だけじゃないピルの妊活への影響
いかがでしたか?今回の内容としては、
- ピルは避妊だけでなく、月経周期の調整にも使われる
- ピルの服用中は普通は妊娠できないが、中止すれば妊娠可能
- 長期服用が将来の妊娠率に悪影響を与えるという科学的根拠はない
- 妊活準備としてピルを活用するケースもある(PCOSの治療など)
- ピルをやめるときも医師と相談すること
以上の点が重要なポイントでした。妊活におけるピルの役割について正しい知識を持ち、自分の体と向き合うことが妊活成功への第一歩です。