近年、ライフスタイルや結婚・出産に対する価値観の多様化に伴い、20代で不妊治療を始める方もいらっしゃいます。不妊治療は30代後半から始める人が多いというイメージもありますが、実際には20代でも「なかなか妊娠できない」という悩みを抱えるケースは少なくありません。
今回は小田原マタニティクリニックより、20代で不妊治療を考える背景やメリット、実際の治療内容、そして精神面や経済面での支えについて詳しく解説します。若いうちから治療を始めるメリットとともに、20代だからこそ意識しておきたいポイントも紹介します。
20代で不妊治療を始める背景とは
結婚のタイミングやパートナーとのライフプランによっては、20代のうちに子どもを望む夫婦も多く存在します。しかし、避妊をやめて1年以上経っても妊娠しない場合は、年齢に関係なく「不妊症」と診断される可能性があります。20代で不妊治療に踏み切る主な理由としては、以下のようなものがあります。
早期からの妊娠希望
結婚後すぐに妊娠を望むカップルにとって、半年〜1年の妊活期間を経ても妊娠しない場合、年齢にかかわらず焦りや不安が生まれます。妊娠のタイミングは個人差が大きいため、「年齢が若いから大丈夫」と思っていても、思うようにいかないケースは多く見られます。
生理不順や婦人科系疾患の自覚
20代でも、生理不順や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症などの婦人科系疾患を抱えている場合があります。これらは妊娠に影響を及ぼす可能性があるため、早期の段階で不妊治療を選択する判断材料になります。
年齢による卵子の質
一般的に、卵子の質や量は加齢とともに低下していきます。20代で不妊治療を始めることで、より質の良い卵子を活用した治療が可能になるため、成功率の面でもメリットがあります。
20代に行われる主な不妊治療の内容
不妊治療にはさまざまな段階があります。20代で行われる治療は、年齢的な身体の状態や妊娠力を踏まえ、比較的体に負担の少ない方法からスタートすることが一般的です。
タイミング法
基礎体温や排卵日をもとに、妊娠しやすいタイミングで性行為を持つ方法です。ホルモン検査や超音波検査を通じて、排卵の有無や周期の正確さを把握し、医師の指導のもとで進めます。20代ではこの方法で妊娠に至るケースも多く見られます。
排卵誘発剤の使用
排卵が不安定な人や排卵障害のある人に対しては、排卵誘発剤を用いることがあります。薬の種類によっては副作用のリスクもありますが、20代であれば体の反応も比較的良好で、妊娠率も高い傾向にあります。
人工授精(AIH)
精子を人工的に子宮内に注入する方法で、性交に頼らず受精の可能性を高める手法として活用されます。排卵のタイミングを合わせて行うため、スケジューリングが重要です。タイミング法と比べて成功率がやや上がるため、数回試みるケースが一般的です。
体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)
20代でこの段階まで進むケースは多くありませんが、重度の男性不妊や卵管閉塞など、明確な原因がある場合は体外受精が選択されることもあります。若い世代であっても、状況に応じて最適な治療を選ぶ必要があります。
20代で不妊治療を始めるメリット
20代で不妊治療を開始することには多くのメリットがありますが、同時に精神面や経済面での不安も伴います。ここでは、実際に治療を進めるうえで知っておきたいことを紹介します。
妊娠率が高く、治療効果が出やすい
20代の卵子は質が高いため、治療効果も出やすく、妊娠率も高い傾向にあります。年齢が上がるほど成功率が下がるため、早期の段階で治療を始めることで、より効率的な妊娠の可能性が広がります。
精神的・身体的な負担が軽く済みやすい
不妊治療は心身への負担が大きく、年齢が上がるほど体調管理も難しくなります。20代であれば身体の回復力も高く、治療に前向きに取り組める体力があるため、通院や投薬、採卵・移植といったステップにも余裕を持って対応しやすいです。
ライフプランに柔軟性がある
20代で治療を始めると、将来的に2人目・3人目の子どもを考える余裕が生まれます。さらに、早めに治療をスタートすることで、万が一うまくいかなかった場合にも選択肢(養子縁組や卵子凍結など)をじっくり検討する時間があります。
20代で不妊治療を始める場合の課題
続いて、20代で不妊治療を始める場合の課題について見ていきましょう。
周囲に相談しづらいという孤独
20代で不妊に悩んでいることを、友人や同年代の人に相談できないという声も少なくありません。「まだ若いのに」「すぐできるでしょ」と言われることへのプレッシャーや、結婚していない友人との価値観のズレに戸惑うこともあるでしょう。
経済的負担の現実
不妊治療は決して安価ではなく、回数が重なれば費用も増大します。20代は社会人としてのキャリアも始まったばかりで、経済的な余裕がない人も多いため、自治体や国の助成金制度、親からの支援などを活用することが重要です。
まとめ:20代で不妊治療を始めるメリットや背景について
いかがでしたか?今回の内容としては、
- 20代でも不妊治療を始める人は増えており、決して珍しいことではない
- 若いうちに治療を始めることで妊娠率の高さや治療効果が期待できる
- タイミング法や人工授精など、比較的負担の少ない治療法が中心
- 周囲に相談しにくい孤独や精神的ストレスへのケアも忘れずに
以上の点が重要なポイントでした。20代で不妊治療を始めるという選択は、早すぎるのではなく「前向きな一歩」です。大切なのは、今の自分と丁寧に向き合い、無理のないペースで治療に臨むことです。