原因不明不妊とは?治療の進め方や心のケアについて

妊娠を希望して1年以上経っても妊娠に至らない場合、不妊症と診断されます。不妊の原因には排卵障害、卵管閉塞、子宮の形態異常、精子の異常など様々なものがあり、多くの場合は検査を通じて原因が特定されます。

しかし、すべての基本的な検査を終えても特に異常が見つからず、それでも妊娠しない状態が続くケースがあります。これが「原因不明不妊」と呼ばれる状態です。原因不明不妊は全体の不妊症の約10〜20%にあたるとされ、決して珍しいことではありません。

今回は小田原マタニティクリニックより、原因不明不妊に関する基本知識から考えられる背景、治療の進め方、そして心のケアの重要性について詳しく解説します。

目次

原因不明不妊とはどういう状態か

「原因不明」とは、「原因が存在しない」という意味ではありません。現時点の医療技術と検査項目では捉えきれない微細な問題や、複数の要因が重なって起きているケースが多いと考えられています。

一般的な不妊検査では、女性は排卵の有無、ホルモンバランス、卵管の通過性、子宮の状態などを調べ、男性は精液検査を受けます。これらに異常がないにもかかわらず、1年以上妊娠に至らない場合に「原因不明」と診断されます。

この診断は、異常がないことを意味する一方で、どこを治療すればよいのかが明確でないため、治療方針を立てるうえで大きな悩みを抱える原因にもなります。

原因不明不妊の背景にある可能性

原因不明とされる不妊には、見落とされがちな要素や、現在の医療水準では評価が難しい因子が複雑に絡んでいることがあります。たとえば、女性の年齢が上がるにつれて、卵子の質は低下します。たとえ排卵が正常に起きていても、受精や着床に適した質の卵子が排卵される確率は年齢とともに低下します。

胚盤胞まで育った受精卵を子宮に移植しても、なかなか着床しないケースがあります。このような場合、子宮内膜の状態や免疫的な要因が関与している可能性があります。

治療の進め方と考え方

原因が明確に特定できない場合でも、妊娠の可能性を高めるための治療方針は存在します。「ステップアップ方式」と呼ばれる方法で、比較的負担の少ない治療から段階的に進めていくアプローチが一般的です。

タイミング法と排卵誘発

最初の段階として、排卵のタイミングを正確に捉え、性交渉を指導するタイミング法が用いられます。これに加え、排卵誘発剤を使って複数の卵胞を発育させ、妊娠の可能性を高める方法もあります。数周期試しても妊娠に至らない場合は、次のステップに進みます。

人工授精(AIH)

精子を洗浄・濃縮し、排卵に合わせて子宮内に直接注入する人工授精は、原因不明不妊に対してよく選択される方法です。自然妊娠に近い形でありながら、精子と卵子の出会いを確実にすることができるため、一定の効果が期待されます。

体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)

人工授精でも妊娠に至らない場合、体外受精や顕微授精が次の選択肢になります。これにより受精や胚の発育を直接確認できるため、見えなかった原因の特定にもつながることがあります。

特に、体外受精では胚の成長過程をモニタリングできるため、卵子や胚の質的問題が浮き彫りになることがあります。さらに、胚盤胞まで育った良好な胚を子宮に戻すことで、妊娠率を高めることが可能です。

原因不明不妊に向き合う心のケア

「原因がわからない」という状況は、明確な目標や対処法が見えない分、精神的に大きなストレスとなります。「自分だけが取り残されている」「何か悪いことをしたのでは」と感じてしまうこともあるかもしれません。

感情を整理し、共有する

不妊治療中は、結果が出ないことに一喜一憂し、心が大きく揺れ動きます。こうした思いを一人で抱え込まず、パートナーと気持ちを言葉で共有したり、専門の心理カウンセラーに相談することで、心が軽くなることがあります。

また、同じ経験をしている人と交流する場を持つことも、孤独感の軽減につながる場合があります。

「治療を続けるか」「やめるか」も選択肢

治療を続けることが必ずしも正解とは限りません。経済的、身体的、精神的負担を考慮し、「いつまで治療を続けるか」「他の人生の選択肢をどう考えるか」について、パートナーと率直に話し合うことも大切です。選択に正解はなく、何よりも大切なのは、自分たちが納得できる道を見つけることです。

まとめ:原因不明不妊とは?治療の進め方や心のケアについて

  • 原因不明不妊は、検査上に異常がないにもかかわらず妊娠に至らない状態
  • 卵子の質や着床障害など、現代医学で捉えきれない要因が背景にあることも
  • タイミング法や人工授精、体外受精など段階的な治療で妊娠の可能性を高める
  • 精神的負担が大きいため、パートナーや専門家との対話で心のケアを重視する
  • 治療を続けることもやめることも含めて、自分たちの価値観に合った選択が大切

以上の点が重要なポイントでした。見えない原因に立ち向かうには、情報とサポートが欠かせません。あなたの選択が、心から納得のいくものであることを心から願っています。

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