治療報告 ~40代人工授精妊娠例~

治療実績などを掲載しているクリニックは多数見受けられますが(当院ももちろん掲載しています)、実際のところどのようなバックグランドの患者様への治療であったかなどは、実績の数字から理解するのは難しいと思います。不妊治療をしようと考えている方が実際気になるのは、自分みたいな人がどのような治療で妊娠できたか(できなかったか)だと思います。ここでは、実際に当院での治療でご妊娠された方について書いてみたいと思います。
当院の月別妊娠率が気になる方は、ホームページに掲載していますのでご覧ください。

目次

Aさんの基本情報

これからご紹介する患者様(Aさん)の基本情報をお伝えします。
年齢:初診時42歳2か月
ご結婚が決まっており、年齢的なこともあり妊娠できるかのチェックを兼ねてご相談に来られました。
初診時の検査では、最大サイズ5㎝大の多発子宮筋腫を認め、子宮内膜が圧排されている状況でした。更にAMH(卵巣予備能検査)は0.30で実年齢より下回り46歳相当ということが分かりました。

初診時に提案した治療内容

初診時の検査結果を踏まえ、大きく以下の3つの提案をしました。

  • 可及的速やかな卵子の獲得
  • ①と並行する形で子宮筋腫核出術の実施
  • 卵管造影検査を実施し、卵管通過障害が認められた場合には卵管形成術を実施

まずはAMH低値への対策として、速やかに卵子を獲得するということを1番に提案しました。そして初診時に月経開始6日目であったということから完全自然周期で採卵を計画しました。

次に、良好胚が得られたとしても、筋腫により内膜が圧排されていることから移植環境も整えておく必要があるため、筋腫核出術を計画し手術に向けてMRI撮影をオーダーしました。

卵管造影検査に関しては、少ない移植機会になるであろうことが予想されたため、少しでも妊娠率を上げる手立てを講じたかったのと、万が一経済的理由などで治療の中止を選択しなければいけなくなった際に、自然妊娠の可能性を少しでも高めておいてあげたいという思いから、通過障害を認めた場合には形成術すべきとお話をしました。

また、この3つに加えて事実婚・法律婚いずれの場合でも、要件を満たせば保険適用での診療が可能なこと、ただし保険適用を受けられるのは42歳を迎えるまでの約10か月の期間であり、胚移植は3回までであることもお伝えし、パートナーとも方針を相談してくるよう伝えました。

お二人が選んだ治療方針

初診から3日後、パートナーとともにAさんが来院されました。
その時のお二人には迷いがなく、「とにかく今はお子様を持つために出来ることを、出来る限りやる」というのがお二人のお答えでした。
早速採卵日を決定(お二人の状況が整わずこの採卵は自費の卵子凍結)と同時に手術日の調整を行いました。

実際の治療経過

採卵後には卵管造影検査を実施し両側ともに通過障害を認めたため、子宮筋腫核出術と合わせて卵管形成術計画し、初診から1か月足らずで手術までを終えました。
術後はお二人の環境が整ったため、移植可能になるまでの時間を使い、保険での移植を目指した採卵周期に入りました。
予想していた通り、卵子の獲得にはかなり難渋しました。卵巣年齢の低下から基礎となるFSHが高く、排卵済みも多々あり、、。今日は卵胞があった!と喜べば空砲に泣かされ、、。
ただ、そのような中でも、自然周期にこだわったのは、卵子の質に重きを置きたかったからです。Aさんのご年齢と卵巣機能から、毎周期ごとに成熟卵の獲得が出来ることは難しいだろうと予想していました。ただ、ここで慌てて刺激周期で複数個の卵子の獲得に走っても、質の良い卵子は獲得できないだろうとも考えており、ひたすら自然周期での採卵を繰り返しました。その中で2度4AAの胚盤胞を獲得し移植を行いましたがご妊娠に至ることはありませんでした。

妊娠しました!!

Aさん42.歳11か月、残りの移植回数1回を残した状態で保険適用最後の採卵周期に臨みました。この周期も自然周期でいつもと同じくギリギリのところでtriggerの時間を決め採卵日時を決定しました。

採卵当日、なんと結果は排卵済みで獲得卵子0個。やはりtriggerがギリギリ過ぎたかと反省はしつつも、早すぎては未熟卵での獲得になってしまっていただろう、と考えながら諦めの悪いわたしは、Aさんにある提案をしました。

それは今から「人工授精」を行うというものです。直近の診察からも当日のエコー所見からも排卵したのはおそらくほんの30分~1時間目であろうと確信し、一理の望みにかけて人工授精を実施しました。

Aさんには治療が自費になってしまう旨お伝えし、自費診療での対応となりましたが、、、

そして人工授精から2週間後の判定日、なんと血中HCG200以上でばっちり妊娠していました。

今回の勝因・治療の振り返り

当日持ち込みの精子所見は良好であったこと、事前の手術で自然妊娠に備え卵管通過障害を解除していたことなど、「人工授精」であっても質の良い卵子の排卵が起こりさえすれば十分妊娠の可能性がある状態にまで調整がつけられており、自然周期にこだわり排卵済みを恐れずtriggerの時間をぎりぎりに設定したことが今回の勝因であったと自分自身で振り返っています。(もちろん採卵を目的としていたので、必ずしも大成功ではないのかもしれませんが、、)

今後もAさんのような決して簡単とは言えない患者様の治療に携わる機会もあると思いますが、自分自身が行き着いたこだわりと患者さん一人一人の状況に合わせたオーダーメイドの治療でより多くの方に赤ちゃんを授けることが出来ればと思っております。

不妊治療の第一歩は相談から

お子さんが授からずに悩んでいるカップルは多くいると思います。
自分たちだけで悩むのではなく、まずは専門の医師・医療機関に相談してみませんか?
当院では不妊検査のみも承っておりますし、患者様のご希望を伺いながら治療方針を決定していきます。
また、いきなり医療機関に足を運ぶことには抵抗があるという方向けに、オンライン不妊相談も実施していますので、お気軽にお問い合わせください。
お電話・HP・WEB予約のいずれも対応しています。

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