人工授精は、不妊治療の一環として多くの夫婦が選択する方法であり、多くの成功例が報告されています。しかし、治療を受ける前に、「痛みはあるのか?」「リスクはどのくらいあるのか?」といった疑問や不安を抱える方も多いでしょう。
そこで今回は小田原マタニティクリニック(オダマタブログ)より、人工授精に伴う痛みやリスクをテーマにお届けしていきますので、ぜひご覧ください。
人工授精とは?
人工授精は女性の排卵時期に合わせて、精子を女性の子宮内に直接注入することで受精を促す治療法です。通常、自然妊娠が難しい場合や膣内射精ができない場合、男性の精子の運動性が低かったり、精子数が少ない場合などで行われます。
人工授精の種類
人工授精の種類としては、子宮腔内へ精子を注入するIUI。子宮頸管内へ精子を注入するICI。骨盤内の卵管に近い部位へ精子を注入するDIPI。卵管へ精子を注入するFSPがあります。IUIが最も行われています。
人工授精に伴う痛み
人工授精は、一般的には痛みが少ないとされていますが、個人差があります。具体的には、以下のような感覚を経験することがあります。
カテーテル挿入時の不快感
IUIの場合、細いカテーテルを子宮内に挿入する際に、軽い圧迫感や違和感があらわれることがありますが、カテーテルは樹脂製で柔らかく、短時間で終了するため痛みはほとんどありません。
しかし、精液の中にプロスタグランジンという物質が含まれており、それにより子宮が収縮して痛みを感じることがあります。ただし、洗浄濃縮することによりプロスタグランジンがある程度除去されているため、痛みは軽減されています。
人工授精に伴うリスク
人工授精は比較的安全な治療法とされていますが、完全にリスクがないわけではありません。続いて、人工授精に伴うリスクについて見ていきましょう。
人工授精で考えられるリスク1.感染症のリスク
人工授精に用いる精子は洗浄処置がおこなわれているものの、カテーテルを使用する際、雑菌が子宮内に入り込むリスクがわずかにあります。それによって、発熱や腹痛といった症状があらわれる可能性が考えられますが、精液に混ざっている菌を除去して注入するため問題となることは多くありません。
人工授精で考えられるリスク2.多胎妊娠のリスク
排卵誘発剤を使用する場合、多胎妊娠(双子や三つ子など)の可能性が高まります。そして、多胎妊娠は、早産や低体重出生などのリスクを伴うことがあります。
人工授精で考えられるリスク3.薬剤の副作用
排卵誘発剤は、ホルモンバランスを調整するための薬剤です。そのため、頭痛、めまい、吐き気、動悸などの副作用が発生することがあります。
人工授精が適さないケース
人工授精は、多くの夫婦にとって有効な治療法ですが、すべての状況に適しているわけではありません。例えば、以下のようなケースでは、他の不妊治療を検討する必要があります。
重度の男性不妊
精子の数や運動性が極端に低い場合、人工授精よりも体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)の方が効果的であることがあります。
卵管閉塞
女性の卵管が閉塞している場合、精子が卵子に到達することが難しくなります。このような場合も、タイミング法や人工授精は効果が限定されるため、体外受精が推奨されることが多いです。当院では、体外受精に進む前に卵管鏡下卵管形成術(FT)をトライすることがあります。
人工授精を受ける際の注意点
人工授精の成功率は個々の状況によって異なるため医師と十分に相談することが重要で、人工授精は1回で成功するとは限らず、複数回の試行が必要な場合もあります。また、治療に伴う費用も考慮する必要があります。
当院では、人工授精は1回約5千円程度です。
まとめ:人工授精に痛みやリスクはある?
いかがでしたか?今回の内容としては、
- 人工授精は、精子を子宮内に直接注入する不妊治療の一つであり、痛みはほとんどない
- 人工授精のリスクとして、感染症や多胎妊娠、薬剤の副作用がある
- 人工授精が適さない場合もあるため、医師との十分な相談が重要
- 成功率は状況により異なるため、費用や時間を含めた総合的な判断が求められる
- 体外受精に進む前に卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うのもひとつ
以上の点が重要なポイントでした。人工授精を考えている方は、まずは専門医に相談し、リスクやメリットを理解した上で、最適な治療法を選択することが大切です。
卵管鏡下卵管形成術(FT)について詳しくは以下の記事をご覧ください。