人工授精は、不妊治療において多くのカップルが選択する方法の一つです。しかし、成功率を高めるためにはいくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
今回は小田原マタニティクリニック(オダマタブログ)より、人工授精の成功率(妊娠率)を上げるための方法や注意点をテーマにお届けしていきますので、ぜひご覧ください。
人工授精とは?
人工授精とは、女性の排卵に合わせて、精子を直接子宮内に注入する不妊治療の一つです。自然妊娠に比べて、精子が卵管までの道のりを短縮するため、受精の可能性が高まります。
人工授精はどのようにして検討されるのか?
人工授精は、タイミング療法を一定期間繰り返しても妊娠しない、精子の運動率が低い、性交が困難であるといった場合に検討されます。
人工授精が検討される女性側の原因
人工授精が検討される女性側の原因としては、
- 卵管性不妊症
- 子宮内膜症性不妊症
- 子宮頚管性不妊症
などが挙げられます。卵管は精子と卵子が出会い、受精した胚が子宮に戻るための道であり、卵管性不妊症は、クラミジア感染症等によって卵管の閉塞や狭窄が起こるものです。子宮内膜症といって、子宮内膜に似た組織が腹膜、卵巣、卵管などの子宮の内腔以外の場所に出来てしまう病気で不妊症につながるものが、子宮内膜症性不妊症です。子宮頚管性不妊症は、排卵日に頚管粘液の量が少なかったり、性状が不良のために精子の進入が障害されることで起こる不妊症です。
人工授精を検討する男性側の原因
人工授精が検討される男性側の原因としては、
- 射精障害
- 勃起障害
- 性交障害
- 精液量が少ない
などが挙げられます。
人工授精の成功率(妊娠率)を上げるには?
続いて、人工授精の成功率(妊娠率)を上げるためにできることについて見ていきましょう。
人工授精の成功率(妊娠率)を上げる方法1.卵子や精子の質を向上させる
卵子や精子の質を向上させることは、人工授精の成功率(妊娠率)を上げることにつながります。たとえば、栄養バランスの取れた食事は、体内のホルモンバランスを整え、卵子や精子の質を向上させる効果が期待できます。
また、男性不妊の検査をおこない、治療可能な疾患が見つかった場合(精索静脈瘤等)、その治療をおこなうことで精子の質は高まります。
人工授精の成功率(妊娠率)を上げる方法2.不妊治療を早めにスタートする
耳にされたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、男性の精子は常に新しいものが生産されますが、女性の卵子は母胎内で胎児期に作られて、新しい卵子が生産されることはありません。そして、女性は年齢を重ねるにつれて卵子の質は低下し、染色体異常も発生するため、不妊治療において年齢は極めて重要です。
つまり、人工授精に限らず、成功率を上げるためには、なるべく早い段階で不妊治療をはじめることを検討すべきであると言えます。
人工授精の成功率(妊娠率)を上げる方法3.ストレス管理
ストレスは、ホルモンバランスに悪影響を及ぼし、人工授精の成功率を低下させる可能性があります。ストレスを軽減するためのリラクゼーション法や、趣味を持つことが効果的です。また、カップル間でのコミュニケーションを大切にし、精神的なサポートをし合うことも重要です。
人工授精の成功率(妊娠率)を上げる方法4.排卵誘発剤の利用
排卵誘発剤を用いた人工授精の妊娠率は高いことが知られており、必要に応じて排卵誘発剤を用います。そもそも排卵誘発剤は卵巣を刺激して排卵を促進させる目的で行うものですが、卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠といったリスクが存在します。
人工授精の成功率(妊娠率)を上げる方法5.卵管鏡下卵管形成術(FT)
卵管鏡下卵管形成術(FT)とは、卵管の詰まりや狭まり(卵管閉塞・卵管狭窄)を改善し、自然妊娠や人工授精の成功率を上げる効果が期待できる手術です。
妊娠に至らない原因として、卵管閉塞・卵管狭窄があるのですが、子宮と卵巣をつなげている卵管は卵子と精子が受精をする場所であるため、詰まっていると自然妊娠はできなくなってしまいます。ですので、卵管閉塞・卵管狭窄によって妊娠できなかった場合、卵管鏡下卵管形成術(FT)をおこなうことで、人工授精の成功率を上げることにつながります。
卵管鏡下卵管形成術(FT)について、詳しくは下記の記事をご参照ください。
まとめ:人工授精の成功率(妊娠率)を上げるには?
いかがでしたか?今回の内容としては、
- 人工授精は女性の排卵に合わせて、精子を直接子宮内に注入する不妊治療である
- 人工授精は、タイミング療法を一定期間繰り返しても妊娠しない、精子の運動率が低いといった場合に検討される
- 人工授精の成功率(妊娠率)を上げるには、なるべく早い段階で不妊治療をはじめることや、卵管鏡下卵管形成術(FT)、排卵誘発剤の利用などが挙げられる
以上の点が重要なポイントでした。人工授精の成功率(妊娠率)を上げるには、今回紹介したように様々な方法があります。卵管の問題が不妊に繋がっている場合などありますので、「なかなか妊娠しない…」と悩まれている方は、その原因を知るためにも、一度医療機関で卵管造影検査をしてみるとよいでしょう。