性病が男性不妊・女性不妊を引き起こす原因とは?

性感染症(性病)は若い世代を中心に広く見られる感染症であり、近年では性感染症の拡大が社会問題にもなっています。一見すると一時的な体調不良や症状で済むように思えるかもしれませんが、適切な治療を行わなかった場合、将来の妊娠・出産に大きな影響を及ぼすことがあります。

特にクラミジア感染症や淋菌感染症などは、不妊症や子宮外妊娠の原因となることが明らかになっています。今回は小田原マタニティクリニックより、性病と不妊の関係をテーマにお届けしていきますのでぜひご覧ください。

目次

性病とは何か

性感染症(Sexually Transmitted Infections, STIs)は、主に性的接触を介して感染する病気の総称です。代表的なものには、クラミジア、淋菌、梅毒、HIV、トリコモナス、カンジダ、尖圭コンジローマなどがあります。

日本における性病の現状

厚生労働省の報告によれば、近年20代の若者を中心にクラミジアや淋菌の感染率が高まっており、特に女性のクラミジア感染は自覚症状が乏しいため、気付かないまま進行してしまうケースが多いとされています。

性病が不妊を引き起こす原因・メカニズム

続いて、性病が不妊を引き起こす原因・メカニズムについて見ていきましょう。

クラミジア感染症と不妊

クラミジアは日本で最も多い性感染症のひとつで、男女ともに感染のリスクがあります。女性の場合、感染が卵管に広がると「卵管炎」を引き起こし、卵管が閉塞することで卵子と精子が出会えなくなり、不妊の原因となります。また、卵管が部分的に癒着した場合は子宮外妊娠のリスクも高まります。

男性においても、クラミジアは精巣上体炎を起こすことがあり、精子の通り道が障害されて不妊につながることがあります。

淋菌感染症と不妊

淋菌も不妊症に関与する代表的な性感染症です。女性ではクラミジア同様、骨盤内感染を引き起こし卵管障害をもたらします。男性では尿道炎が精巣上体に広がることで精子の通過障害を引き起こし、妊娠が難しくなることがあります。

梅毒・HIVと妊娠

梅毒やHIVは直接的に不妊を引き起こすことは少ないものの、母体から胎児への感染(母子感染)という重大な問題があります。妊娠を希望する段階でこれらの感染があると、母体・胎児ともにリスクが高まります。

性病と女性不妊の関係

続いて、女性不妊と性病の関係についてより深く見ていきましょう。

卵管因子不妊

クラミジアや淋菌による骨盤内感染は、卵管の癒着や閉塞を招き、卵子と精子が出会うのを阻害します。女性不妊の約3割は卵管障害が原因とされ、その多くに性感染症の既往が関わっています。いわゆるピックアップ障害にも関係してきます。

子宮内環境への影響

慢性的な感染や炎症は子宮内膜にも影響を与えることがあり、受精卵が着床しにくい環境を作る可能性があります。そのため、見過ごされた性感染症が不妊治療において大きな障壁となることも少なくありません。

性病と男性不妊の関係

続いて、男性不妊と性病の関係についてより深く見ていきましょう。

精子の通過障害

男性の場合、クラミジアや淋菌による精巣上体炎や前立腺炎が不妊の要因になります。これにより精子の通路が狭くなったり塞がれたりして、精子が正常に射出されなくなるケースがあります。

精子の質への影響

クラミジア感染が精子の運動率や形態に悪影響を及ぼすことも報告されています。精子のDNA断片化率が高くなると、受精率や妊娠率が低下する可能性があります。

性病が不妊に及ぼすリスクを減らすためにできることとは?

続いて、性病が不妊に及ぼすリスクを減らすためにできることについて見ていきましょう。

定期的な検査の重要性

性感染症は自覚症状が乏しいことが多く、特にクラミジア感染では約7割の女性が無症状といわれています。そのため、妊娠を希望するカップルは、定期的な検査を受けることが予防につながります。

早期治療とパートナーの同時治療

性病が見つかった場合、抗菌薬などでの治療が必要です。このとき、自分だけでなくパートナーも同時に治療しなければ再感染のリスクが残ります。再発を防ぐためにはカップルで一緒に取り組むことが不可欠です。

コンドームの活用

コンドームはHIVやクラミジア、淋菌など多くの性感染症の感染予防に有効です。完全に防ぐことはできないものの、リスクを大幅に下げるための基本的な手段です。

まとめ:性病が男性不妊・女性不妊を引き起こす原因とは?

いかがでしたか?今回の内容としては、

  • 性病は一時的な感染症にとどまらず、不妊の原因となる可能性がある
  • クラミジアや淋菌は卵管障害や精子通過障害を引き起こし、妊娠を難しくする
  • 無症状で進行するケースが多く、定期的な検査が重要
  • 感染が確認された場合はパートナーと同時に治療を行うことが必須

以上の点が重要なポイントでした。性病は恥ずかしいもの、隠すべきものと思われがちですが、将来の妊娠やパートナーの健康を守るためには正しい知識と早めの対策が不可欠です。不妊治療を始める前に性感染症のチェックを行うことは、自分自身と大切な人の未来を守る第一歩といえるでしょう。

  • URLをコピーしました!
目次