不妊治療に伴うさまざまな副作用やリスクについて

不妊治療は、多くの夫婦にとって妊娠という希望を叶える大切な一歩であり、医療の進歩とともに多くの選択肢が広がりつつあります。しかし、その過程に伴う身体的・精神的な負担やリスクについて、十分に理解されていない側面も少なくありません。

今回は小田原マタニティクリニックより、不妊治療に伴うさまざまな副作用をテーマにお届けしていきますのでぜひご覧ください。

目次

ホルモン刺激による副作用

不妊治療において、排卵を促すホルモン剤(クロミフェン、ゴナドトロピンなど)は非常に重要な役割を果たしますが、一方で身体への影響もいくつかあります。

クロミフェンでは、視覚障害・悪心・嘔吐・食欲不振・疲労感・AST上昇、ALT上昇、ビリルビン上昇、γ-GTP上昇といった副作用が挙げられます。重大な副作用としては稀ではあるものの、卵巣腫大、下腹部痛、下腹部緊迫感、腹水、胸水、呼吸困難を伴う卵巣過剰刺激症候群があらわれることもあります。

ゴナドトロピンの副作用としては、過敏症・発疹・めまい・頭痛・興奮・不眠・抑うつ・疲労感。重大な副作用としては稀ですが、顔面潮紅・卵巣過剰刺激症候群・卵巣腫大・下腹部痛・下腹部緊迫感・腹水・胸水・卵巣茎捻転・重度卵巣過剰刺激症候群などが挙げられます。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

促排卵により生成される卵胞が過剰になると、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が生じることがあります。症状としては、腹腔や胸腔への体液貯留(腹水・胸水)、腹痛、腹部膨満感、吐き気、体重増加、尿量減少が見られ、軽度から重度まで幅があります。

当院で行っている自然周期(クロミフェン低刺激周期まで)の治療では、このOHSSがまずおとりません。

重度の場合は入院治療が必要になることもあります。これらは、超音波検査で細かくチェックして、卵巣刺激の薬剤投与量を調整したり、排卵誘発剤の選択などで予防します。

出血・感染などの手術リスク

採卵手術は超音波ガイド下で細い針を用いて卵子を採取しますが、まれに卵巣のねじれ、出血、感染、周囲臓器損傷などのリスクが存在します。

人工授精に伴うリスク

人工授精では、精子を子宮内に注入する処置が行われますが、まれに腹膜炎や卵管炎といった炎症が起こることがあります。また、性行為の頻度が減少し、結果的にセックスレスになるケースも報告されており、精神面への配慮も重要です。

多胎妊娠・子宮外妊娠・先天異常などの妊娠関連リスク

体外受精(IVF)では、胚を複数移植すると多胎妊娠のリスクが高まります。多胎妊娠では早産、低出生体重、妊娠・分娩時の合併症のリスクが増加することがあります。また、子宮外妊娠(異所性妊娠)もゼロではなく、確認されれば速やかな医療介入が必要です。

精神的・心理的ストレス

不妊治療は身体的負担に加えて、期待と挫折を繰り返す過程において、ストレス、抑うつ、不安など精神的な問題を抱えることも少なくありません。

治療結果への不安、経済的負担、タイミングと仕事・生活との調整など、さまざまな要因が心理的負担を増加させます。

経済面や仕事との両立における課題がある

日本では近年、不妊治療が急速に一般化し、2022年には体外受精により約7万7千人の子どもが誕生し、全出生児のおよそ10人に1人という割合になっています。2022年より人工授精や体外受精が保険適用となったものの、依然として費用負担は重く、治療と仕事の両立も大きな課題です。

まとめ:不妊治療に伴うさまざまな副作用やリスクについて

いかがでしたか?今回の内容としては、

  • 不妊治療ではホルモン剤の使用により、卵巣過剰刺激症候群などの身体的リスクが生じることがある
  • 採卵手術や人工授精には出血・感染・炎症などの手術リスクや、精神的負担も伴う
  • 体外受精では多胎妊娠や子宮外妊娠のリスクがある
  • 治療過程では、期待と挫折の繰り返しによるストレスや抑うつ、不安など心理的負担が大きい

以上の点が重要なポイントでした。不妊治療は身体面・精神面・経済面での負担が伴います。適切な情報収集と医療機関との相談を通じて、安全かつ無理のない治療を進めることが大切です。

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