妊娠中は、女性の身体に大きな変化が起こります。ホルモンバランスや血液量の増加、体重の増加などにより、血圧にも影響が出ることがあります。その中でも注意が必要なのが「妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)」です。
妊娠中の高血圧は、母体だけでなくお腹の赤ちゃんにも悪影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と適切な管理が非常に大切です。今回は小田原マタニティクリニックより、妊娠中の高血圧をテーマにお届けしていきますので、ぜひご覧ください。
妊娠高血圧症候群とは?
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に発症し、分娩後12週までに改善する高血圧のことを指します。以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていましたが、現在では症状の範囲がより明確に定義されています。
診断基準は、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上となっています。この病気は、母体の血管が収縮しやすくなることで全身の血流が悪化し、胎盤への血流も減少します。その結果、赤ちゃんの発育に影響を及ぼしたり、母体が重篤な合併症を起こしたりする可能性があります。
発症の原因とリスク因子
妊娠高血圧症候群の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、胎盤の血管形成異常が関係していると考えられています。胎盤の血流が不十分になることで、母体の血圧が上昇し、全身の血管に負担がかかるのです。
発症しやすいとされるリスク因子には、次のようなものがあります。
- 初めての妊娠
- 多胎妊娠(双子や三つ子など)
- 高齢妊娠(35歳以上)
- 肥満
- 高血圧や糖尿病の既往
これらの要因に当てはまる場合は、より慎重に経過を観察する必要があります。
妊娠高血圧症候群の症状
妊娠高血圧症候群の初期は自覚症状がないことも多く、定期的な妊婦健診で血圧を測定することが重要です。進行すると、以下のような症状が見られることがあります。
- 頭痛
- むくみ(特に顔や手足)
- 急激な体重増加
- 目のかすみや視覚異常
これらの症状が現れた場合は、自己判断せず、すぐに医療機関を受診する必要があります。
母体・胎児への影響
妊娠高血圧症候群は、母体にも胎児にも影響を及ぼすことがあります。母体では、脳出血、肝機能障害、腎機能低下、子癇(けいれん発作)などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。また、胎盤早期剥離(たいばんそうきはくり)といって、出産前に胎盤が剥がれてしまう状態になることもあります。
胎児への影響としては、胎盤の血流が減ることで栄養や酸素が十分に届かず、発育遅延や低出生体重児につながることがあります。
治療と管理の方法
妊娠高血圧症候群の治療は、症状の重さと妊娠週数によって異なります。軽症の場合は安静や食事療法、塩分の制限などで血圧をコントロールします。一方、重症の場合には入院管理が必要になることもあります。
治療の基本は、「母体の安全を守りつつ、できる限り妊娠を継続する」ことです。しかし、母体や胎児の状態が悪化する場合は、妊娠の継続が危険と判断され、早期分娩が行われることもあります。医師の指示に従い、定期的な血圧測定や尿検査、胎児の発育確認を行うことが重要です。
日常生活での予防と対策
妊娠高血圧症候群を完全に防ぐ方法はありませんが、リスクを減らす生活習慣を心がけることは可能です。
まず、塩分の摂りすぎに注意し、野菜や果物を中心としたバランスの良い食事を心がけましょう。体重の急激な増加を避けることも大切です。適度な運動やストレッチも血流改善に役立ちます。
また、ストレスの蓄積は自律神経を乱し、血圧上昇の一因となることがあります。休息を十分に取り、心身のリラックスを意識することも予防につながります。妊娠高血圧症のうち腎症はバイアスピリンの服用が予防になるとのデータもあります。
そして何より、定期的な妊婦健診を受けることが最も重要です。自覚症状がないまま進行することもあるため、健診での血圧測定や尿検査が早期発見の鍵となります。
まとめ:妊娠中の高血圧(妊娠高血圧症候群)とは?
いかがでしたか?今回の内容としては、
- 妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降に発症する高血圧
- 原因は胎盤の血流異常などが関係している
- 食事管理、体重管理、ストレスケアが予防に有効
- 定期的な妊婦健診が早期発見と安全な出産の鍵
以上の点が重要なポイントでした。妊娠中は自分の体だけでなく、お腹の赤ちゃんの健康も守る時期です。少しでも異変を感じたら、ためらわず医療機関に相談することが、安全で安心な出産につながります。

