レトロゾール単独周期
レトロゾール単独周期は、卵胞の成長をゆるやかに助けます
レトロゾール単独周期体外受精は、レトロゾール(アロマターゼ阻害剤)のみを使用し、育ってくる卵胞から採卵をし、それを受精させ、原則新鮮胚で移植する方法です。基本的には採卵できる卵子の数は1つですが、小卵胞を含む全卵胞採卵により、複数卵子を回収できることもあります。子宮内膜やホルモン値などを考慮し、新鮮胚移植もしくは凍結融解胚移植を行います。
この方法でも、からだに負担をかけることなく、そして医療による手助けを過剰に行わない、より自然に近い方法で妊娠を目指します。
多のう胞性卵巣(PCO)の方に効果的
レトロゾールは、卵胞での女性ホルモン産生を阻害する働きがあり(女性ホルモン合成阻害剤)、この結果、卵胞のホルモンの感受性が良くなって、少量のFSHでも発育を続けるようになります。しかし、レトロゾール自身には卵巣刺激作用がありませんから、発育する卵胞数が増加することはありません。この点は完全自然周期とほとんど同じです。
異なる点は、FSHが低い人でも卵胞が発育し、排卵に至るということです。たとえば、多のう胞性卵巣(PCO)などはその典型例です。PCOでは小卵胞が多すぎるためにホルモンのバランスが崩れ、LHが高くFSHが低くなっているからです。
赤ちゃんへの安全性を最大限考慮
レトロゾールはもともと閉経後の乳がんの治療薬として販売されていました。したがって、胎児に対する影響は検討されていませんから、安全性に最大限配慮する必要があります。しかし、2022年4月に不妊治療にも適用となりました(一定の条件あり)。
そこで当クリニックでは、内服量と内服期間の点から安全性に配慮し、レトロゾールの服用は月経3日目からの3日間のみとしています。この飲み方では、半減期的に月経12日以降にレトロゾールが体内に残存することはないからです。つまり排卵期の卵子は、レトロゾールの影響を受けないということです。
さらに、レトロゾールを使用した周期では、レトロゾールの飲み終わりから12日以上経過していない場合は胚移植を行わず、一旦、凍結保存したのち、レトロゾールの影響がない、翌周期以降の自然周期に移植します。
なお、レトロゾール単独周期は、女性ホルモンの変化を予想しにくいために、採卵前に排卵済になってしまうことが多いという欠点があります。
このような方に適した治療法です
月経周期が35日~45日(やや月経周期の長い方(※)
※診察、検査を行ったうえで診断いたします。
通院スケジュール
月経2、3日目
月経2、3日目は診察の基本です。卵胞(卵子を入れている袋/月経3日目で径約5mm)数、FSH(卵胞刺激ホルモン)、AMH(抗ミューラー管ホルモン/卵胞数のホルモン的指標、当クリニックではpM単位)、の計測、前周期の遺残卵胞がないかなど、その周期の基本情報を確認します。レトロゾール単独周期の場合は、月経3日目から3日間のみレトロゾールを服用します。
月経10、11日目頃
2回目の診察は月経10、11日目頃です。これは治療周期2、3日目に決定されます。
卵胞の発育を確認し、状況に応じて、ホルモン検査を行います。女性ホルモン値により微量クロミフェンを開始するか判断します。
通常はこの時の所見をもと基に3回目の診察日を決めます。
月経15~17日目頃
通常、月経15~17日目頃が3回目の診察日です。女性ホルモンが250程度に満たない場合は、4回目の診察が必要になります。
採卵日の決定(予定採卵)と準備
数回の診察の後、女性ホルモン値と主席卵胞の大きさが最適になったら、採卵日を決定します。通常は女性ホルモンが250程度に達すると採卵の準備に入ります。排卵を促す脳ホルモン(LH:黄体化ホルモン)が上昇していない場合は、ブセレキュア(GnRHアゴニスト)という点鼻薬を用いて人工的に上昇させ、2日後の午前中に採卵します(予定採卵)。しかしLHが予想より早く上昇してしまった人は自然の成り行きに従って、当日または翌日の排卵直前に採卵します(緊急採卵)。